美味しいしあわせ

くつろぎのひと時のお料理やお菓子とお酒 季節の花と緑

中東の味 ファラフェル


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渦中の中東のお料理「ファラフェル」

私の大好きなひよこ豆ガルバンゾー)を使って揚げたお料理です

有名なピタパンで挟むファラフェルサンドにしても美味しい

ピタパンでなく普通のパンでサンドしても充分美味しい一皿です

パンに挟むときはファラフェルだけでもいいしサラダ菜やオニオン等生野菜と合わせるとヘルシーに。

そこに甘辛く味付けしたお肉やタンドリーチキン ラム肉など入れると更にゴージャスなサンドイッチになります

今回おソースはヨーグルトミントソースにしました

このおソースはサンドイッチにも使えます

サラサラしているので私は横におソースだけ別に添えてスプンで垂らしながら一口パクリとします

そのくらいたっぷりとかけたくなるお味です

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☆レシピ☆
「中東の味 ファラフェル」

〈ファラフェル材料〉

ひよこ豆 230g

玉葱 1/4個

ニンニク 1片

塩 クミン コリアンダー ガラムマサラ 各小1/2

重曹 小1/2

薄力粉 適量

〈ファラフェル作り方〉

ひよこ豆は乾燥より水煮のほうが簡単に使えるのでここでは水煮を使います

何度も水を変えてよく洗いサッと水気を切る

・玉葱 ニンニクはみじん切り

・ミキサーに薄力粉と重曹以外の材料すべて入れてミキサーする

混ぜにくいので途中さいばしなどで寄せたりしながらミキサーして下さい

出来上がりは少し粒が残る程度ですf:id:habbule-no-neko:20240416140152j:image

・冷蔵庫で1時間ほど寝かせる このままだとパラパラしますが寝かせると丸めやすくなります

・揚げる直前に重曹をいれて混ぜ合わせる

・丸めて薄力粉をまぶしバットに並べ揚げる準備をする

・180度の油でこんがりするまで揚げる

〈ミントソース材料〉

ミント 30g

ヨーグルト 1箱 400g

ニンニク チューブのもの5センチ

生姜 5ミリスライス1枚

玉葱 みじん切り大2

塩 小1/2

(ミントソース作り方)

・ボウルにザルをセットしヨーグルトを1箱あけて冷蔵庫で2時間以上水気を切る

出てきた水分はホエーといって栄養が豊富なので捨てずに飲むと体にいいです

・ミントを洗い水気をとる

・生姜 玉葱はみじん切り

・ミキサーに材料をすべて入れミキサーする

ミントを最初に入れるとふわふわせずにミキサー出来ます

揚げたファラフェルをミントソースと共にボナペティ!

おソースは余ったらサラダにかけたり白身魚のソースにもなります

我が家ではドリトスなどのタコスチップスにかけて食べるとあっという間になくなります

ファラフェルは香辛料のエスニックな香りと豆の素朴な旨味が心に染みる味

ラム肉のグリルやインドカレーの付け合せにすると異国情緒ある一皿になります

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甘くてビックリ人参の天ぷら


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大学生の娘が京都で友人とお食事会

今から帰るというので駅にお迎えに行くと車に乗り込むなり

「ねぇ 人参の天ぷらって食べたことある?」

どうやら今夜のお料理に出たらしくそれはそれは美味しかったとのこと

今度作って!!

ちょうど毎年恒例 奈良の叔母様のお山で採れた筍を送って下さっていたので今夜は天ぷらです

試しに人参は薄く切ったのと太めのものを揚げました

お店では薄いものだったらしいのですが

薄いのは上品な甘いお野菜の印象

厚く切ったのは人参の甘さと柔らかな食感が野菜として存在感のある印象

どちらも人参臭さは全く消えて只々甘くて優しいお味でした

収穫の季節の採れたて人参なら更に旬の甘みと柔らかさが感じられそう

色もオレンジで差し色になるので揚げ物に混ぜると華やかになりました

小さなお子さんの人参とのファーストコンタクトにもいいかもしれません

ちなみに京都でのお食事は全員二十歳を超えていたのでお酒もいただいたとのこと

しゃんとして帰ってきましたがこれから心配も増えそうです

ま 人には何も言う資格ないワタシだけれど(苦笑)

☆レシピ☆

「甘くてビックリ人参の天ぷら」

(材料)

人参

天ぷら粉と水 

(作り方)

・人参を生のまま皮をむいたら好みの薄さにスライスして軽く塩して水で溶いた天ぷら粉をつけて揚げるだけ

熱々でも冷めても甘さ感じる美味しい天ぷらでした

鰹のお出汁でいただく鴨ネギラーメン


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うどんつゆのパックを使って作るラーメン

つゆをお鍋にあけて鴨肉を放り込んだらあとは待つだけ

クツクツと火を通して茹でた麺とネギを乗せたら出来上がり

あっさりした和のお出汁に大好き鴨肉で脂を足して麺とのバランスをとります

食後もサッパリとして罪悪感なしです

(個人の感想です(笑))

ちなみに

我が家で普通のラーメンを食べる時のトッピングをご紹介

オススメなのは生レタス です!

丼にスープを作ったら そこに大量レタスをてんこ盛りにして少々レンチンします

レタスはあまり細かくせずに大きめにカットするのがオススメ

熱々のスープにレタスがしなっとなったら麺を入れて頂きます

美味しい(笑)

レタスは脂と相性抜群です

他にはニンジンを生のまま千切りにしてラーメンにトッピングするのも好き

味噌ラーメンや醤油ラーメンに合いますよ

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☆レシピ☆

「鰹のお出汁でいただく鴨ネギラーメン」

(材料)

おだしつゆパック

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お好きな生麺

鴨肉モモ

ネギ

(作り方)

・だしつゆパックを鍋にあけて鴨肉を適量入れて火を通す

・生麺を表示時間茹で鍋に入れて馴染ませたら器にあけてネギを乗せて出来上がり

パプリカのディップ


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ふぅ♫

急に始まった小料理屋のお話も一段落してホッとしております(笑)

最初は1話だけ書くつもりがなんだか妄想が膨らんでしまいました

ともあれ小料理屋のメニューを考えたおかげで我が家はしばらくご馳走続き

牛タンシチューのレシピは本当に苦労したけれど最高に美味しい一皿が完成して嬉しかったです

でもお話も考えてレシピも考えるのはちょっと疲れたのでもうしばらくないと思います

ここからはノーマルバージョンで(笑)

さて今回はヘルシーな野菜のディップ

粗く刻んだマカダミアナッツの食感も楽しいパプリカのディップです

使うパプリカによって完成の色が変わるので赤 オレンジ 黄色と三色作っても楽しい

今回は赤と黄色で作りました

見た目の滑らかさが違うのは

赤はバーミックスで黄色は後日ミキサーで作ったからなのですが

なぜそうなったのかというと

バーミックスは使用後刃先だけ洗えばいいので楽するために赤のディップを作ったときに使ったのですが

その後取り付け式の刃先が行方不明ということが判明

仕方なく黄色を作るときはミキサーを使ったという事情

小さいので間違えて捨てちゃったかなぁ

いつかやるとは思っていたけど

ハサキちゃん 出ておいで〜!(涙)

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☆レシピ☆

「パプリカのディップ」

(材料)

パプリカ 1個

マカデミアナッツ 20g

アンチョビペースト 10g

チューブニンニク 5g

バター 40g

パルミジャーノレッジャーノ 5g

(作り方)

・パプリカを洗って縦半分に切り種を除いて皮が真っ黒になるまでグリルで20分焼く

・皮をむいてみじん切りにする

マカダミアナッツを粗く刻む

・バターを数秒レンチンして柔らかくする

マカダミアナッツ以外をミキサーする

・ミキサーしたものを器にうつし最後にマカダミアナッツを加え混ぜ合わせて出来上がり

パンと一緒にボナペティ!

牛タンのシチュー 第四話


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それにしても出される料理もさることながら盛り付ける器もなかなか趣味がいい

高級クラブでホステスをしていたとはいえそれだけではない何か素性の趣味の良さが店構えからも感じられる

一体なぜこの無垢な女があんな場所で働いていたのだろう

「よろしければ次のお料理は牛タンのシチューなんていかがかしら」

うちのお店の看板メニューですのよ

そう言って勧めるので ではそれをとお願いした

「割烹風なのに洋食とは珍しいね」

と聞くと実はと憂いを含んだ優しい顔で話し始めた

亡くなった主人の実家は洋食屋を営んでおりまして主人は小さい頃から料理が好きでよく店を手伝っていたようなんです

牛タンのシチューは実家のお店の看板メニューで 評判が良かったので私たちのお店でも出すようになって

亡くなった日も少し離れたお肉屋さんに仕入れに向かって その途中で事故にあってしまいましてね。。

それは残念でしたねと 彼の死の真相を知り素直に淋しい思いがした

えぇ本当に お店もやめてしまおうかとも思ったんですが私にはお料理くらいしか取り柄もなくて常連さんもやめないでくれとおっしゃるもんで何とか今まで頑張って来ましたの

けれどなにぶん一人なもので行き届かないこともありましてね 今日もバタバタしてしまって

とすまなさそうに詫びる姿がいじらしい

この儚げなところも常連たちに何とかしてやりたいと贔屓にされる理由の一つなのだろう

ところで女将さんお料理はどこで勉強されたんですか

気やすく身の上話を聞かせてくれたもので つい不躾に聞いてしまった

どの料理も大層美味いのでと慌ててつけ足して褒めると まぁと照れながら彼女の生い立ちを話してくれた

私の実家は昔武家の没落貴族でして祖父の代にはかなりの家屋敷や財産があったんですが小豆相場で全部なくしてしまいそのまま祖父は他界してしまいましたの

私の父はまるでお金に無頓着だったもので変わらぬ暮らしぶりにみるみる家屋敷が抵当に入り借金を抱えるようになりましてね

そこからあれよあれよと母が心労で亡くなり

父は妾と家出してしまって

残された私はそれはもう生きるのに必死でお恥ずかしいような仕事もして働きましたの

そんな頃に主人と行きつけの定食屋で出会って付き合うようになりましてね

私に結婚しようと言ってくれたんですが主人のご両親には私の実家のことや当時の私のお仕事がしれてしまってそれはもう猛反対で

主人は当時あと少しで大学を卒業するという頃だったんですけれどとうとう駆け落ちしてそれで二人で大阪にやって来て小料理屋を始めたんです

主人はもともと実家をよく手伝っていたらしく料理が得意で

私も昔まだ家が裕福だった頃には家に専属の料理人がおりましてね

私たちのお食事を作ってくれておりましたのを傍らで見るのが大層好きだったものですから料理もその時その料理人から教えてもらったのがこうして店をしていられることに繫がったようなことで

あの時はまさかこんな風に生業になるとは想像もしておりませんでしたけれどもね

と美しい顔であっけらかんと笑ってみせた

それまでの暮しらしとは全く違う人生となったことを恨むでもなくおおらかに受け入れている肝のすわった人柄は案外育ちの良い遺伝子のせいなのかもしれない

先祖代々そうやって時代に翻弄されながらもタフに生き抜く強さが本能的に備わっているのだろう

見かけの儚げな美しさとは裏腹な妙な安心感のある所が田宮の目にも止まったのかもしれない

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☆レシピ☆

「牛タンのシチュー」

(材料)

牛タン一本 今回は650gでした

人参 1本

玉葱 1個

セロリ 1本

ニンニク 3個

トマト缶 120g(1/2缶にあたる量)

ローリエ 1枚

太葱 10cm

デミグラスソース缶 2つ

(ハインツのもの一缶290gを2つ使いました)

塩 小1/2

コンソメ顆粒 大1

赤ワイン 300cc

ケチャップ 150g

水 600cc

ラニュー糖 大3

長時間煮込むので使うお鍋は焦げ付きにくいものを使用して下さい

(作り方)

・お茶パックの不織布の袋にローリエと白ネギを5センチに切ったものをいれる

・人参 玉葱 セロリは2センチ角 ニンニクは半割りにする

・牛タンを小さなステーキサイズにカットする

・赤ワインを小鍋に入れて斜めにして底にトロリとまとわりつくようになるまで煮詰めるf:id:habbule-no-neko:20240407071149j:image

・ここまで煮詰まればケチャップを入れて混ぜ続け香りをかいで酸味が感じられなくなるまで混ぜ続ける

ドロリとしたペーストになります

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・その鍋に水600ccを少しづつ入れて溶かしておく

・牛タンに塩適量(分量外)をする

・煮込む用の大きな鍋に油をひいて肉を入れすべての面に焼き色をつけて取り出しておく

・焦げ目の残る鍋に油を足して人参 玉葱 セロリ ニンニクを入れて水少々(分量外)も入れて底の香ばしい焦げ目をこそいで野菜に移す

・中火弱で5分ほど炒めて野菜の甘さが出てきたらカットトマトを入れて酸味を飛ばすように炒める

・香りをかいで酸味が飛んだらデミグラスソース缶とコンソメ顆粒 塩を入れ赤ワインとケチャップをペーストにしたのを溶かしたスープも入れる

・焼いておいたお肉を鍋に入れローリエとネギを入れた袋も入れて蓋をして煮込む

・沸騰したら少し火を弱めて時々蓋をあけてしばらくアクをとる

・ある程度アクがでなくなれば火を弱めて蓋をして別の鍋でキャラメルソースをつくる

・小鍋にグラニュー糖と砂糖がしめる程度の水少々(分量外)を入れて火にかけ泡が立ちしばらくしてキャラメル色がついてきたら火から離す 

自然に加熱が進んでキャラメル色が濃くなるまで待ち いい色になれば煮込んでいるお鍋にあける

※キャラメル色が黒くなれば行き過ぎ 薄い黄色だと足りない適度な色に仕上げて下さい

※鍋に入れるとジュウッと少しはねます

気を付けて入れてください

・すべて混ぜ合わせて後は2時間煮込みます

火加減は少しクツクツさせた弱火

時々蓋をあけて鍋底が焦げ付いていないか かき混ぜて確認して下さい

万が一水分が減りすぎてお肉が随分と飛び出しているくらいになってしまったらコンソメスープを足して水分量を調整して下さい

・終盤味見をして足りなければ塩などで調整して下さい

・煮込み終わればお肉とローリエと長ネギを入れていた袋を取り出す

・大きなボウルにザルをセットし野菜をヘラで潰しながらスープを濾す 

多少繊維は残ります 残ったものは捨てて下さい

・スープを鍋に戻しお肉も戻して再び火にかけ煮立ったら火を止めて一晩おく

保存は冷めたら必ず冷蔵庫に入れてください

・次の日温めて再度味見をして味を決める

お肉は固く見えますが温め直すと柔らかくなります

ソースの味さえ決まればあとは器にうつしてレンジで温め直すほうが肉もソースも熱々で提供できると思います

柔らかいお肉をコクのあるデミグラスソースと一緒にボナペティ!

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いつの間にか呑み終えた日本酒の代わりに牛タンのシチューに合わせてほどよいグラスに深い赤色をしたワインがつがれて出てきた

シチューによく合いますの

深みのあるワインと共にシチューを味わいながら 全ての謎を二十年ぶりに知れたことに何か田宮との不思議な縁を感じた

命日だって言ってたな

それほど自分のなかに記憶もないかつてのゼミの仲間に今日ここに自然と足を向けられたような そんな心持ちがして何やら妙な思いがした

牛タンのシチューを食べ終わり皿を引こうとした女将に実は といいかけて田宮との妙な縁を話そうとした時

ガラリと店の戸が開いて大柄の紳士がこんばんはと入ってきた

女将はアッと少し驚いて頬を赤く染めたが すぐ何気ない素振りであら先生今日も来てくださいましたのね まぁまぁ雨の中ありがとうございますどうぞこちらへとカウンターの隅の席に案内した

席を用意する素振りで女将はさりげなく田宮の写真をカウンターのなかにしまった

先生と呼ばれた男は50代半ば頃か

決して男前とはいえないが真面目な風貌が意思の強さを伺わせる

近くにある病院の名前が貼られた携帯を脇に置いてチラリと着信がないか確認したところをみるとその病院の医師らしい

恋には慣れていなさそうな実直さがいい歳をした男には不似合いながらも 直感で女将に気がありそうなことはその真面目さからかえって正直に感じられる

今日は一応帰れるはずなんだけどね

申し訳ないけれどお茶でよろしく

そう言うと女将はいつものことなのだろうわかりましたとうっすら華やいだ頬で氷を入れた烏龍茶を運んできた

間がもたないのかその大柄な紳士は同じカウンターに座る私に話しかけてきた

こんな湿った日に灯りのついてない部屋に一人帰るのはなんだか淋しくてねぇ

ついこの店の戸をふらっとくぐってしまうんですよ

と照れ隠しの笑顔で話しかけてきた

「私もそうなんです」と話を合わせたがその紳士の指に結婚指輪がないのをみると独身なのだろう

何になさいますかと聞く女将

任せますという彼もどこか初々しい

二人の姿はどこか青い春を感じさせた

新しい恋が始まろうとしているのだろう

それで今日自分はここに田宮に連れてこられたのかもしれないな

そう思ったりもしたが

私が田宮の代わりに何かしてやれることは何もない

そう思えるほどその男は女将に申し分のない相手に思えた

田宮よ 俺に何かを言わせたかったのかもしれないが 俺がとやかくいうことは何もない

悪いがお前の舌はとっくに食べちまったしな

そう考えて言いかけた話をやめ最後のワインを飲み干した

勝手にカウンターに相席していることに気まずさを感じ 女将さんにご馳走さまでしたと勘定を促した

急な献立の終わりに女将は少し驚いて

最後にご飯ものか何かよろしいですの?

と聞いてくれた

あぁ家に帰ると家内の漬けた古漬けがあるもので帰って茶漬けを食って寝ますよと笑って勘定を済ませ店を出た

戸口を開けて見送る彼女に旨かったおやすみなさいと言い残して夜道を歩きだす

いつの間にか雨は止んで空には星が出ていた

はやけにキラキラとして揺れるように輝いている

帰ったら本当に家内の漬けた古漬けで茶漬けにしよう

発酵食品は体にいいから必ず食べてねと

月に一度東京から大阪への帰り際漬けたのを持たしてくれる

次 東京に戻ったら二人で久しぶりに食事にでも行くか

空の星はいつまでも揺れてキラキラと輝きを放っていた

                  了    

金目鯛と蓮根餅の蒸し物 第三話


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お口に合いますかしら

座敷の客も出された一通りの料理でしばらくは楽しくやるのだろう

一息ついた顔で女将が話しかけてきた

えぇ塩梅が丁度いい 昔から知っているような懐かしい味がします

つい言ってしまってから何か思わせぶりに取られやしないかと一人緊張したが女将の方はそれは良うございましたと微笑み まな板の上で柔らかそうな新生姜を針のように刻みだした

よろしければ蒸し物なんていかがかしら

今日は金目鯛のいいのが手に入りましたの

とすすめるので ではそれをと最後のビールを飲み干す

我ながら今日は少しペースが早い

熱燗を頼んで座敷の客達の賑やかなのを聞く

漏れ聞こえる話から

どうやら大阪在住の北海道大学出身者の同窓会らしい

北海道大学には一度出張の時寄り道して見学したことがある

BOYS BE AMBITIOUSで有名なクラーク博士だが 晩年の彼は彼の抱いた大志のために借金を抱え孤独に亡くなったことを何かで読んだ

自分の大学の同窓会も就職した当初仲間内で頻繁にやっていたが既婚者が増える度集まる回数も減り今ではほとんどみんなで会うことはない

たまにポツリと友人から連絡があると二人で飲みに行く程度になった

田宮の駆け落ち話は卒業して半年経った頃に開いた同窓会で聞いた話だった

女将が手際よく用意した器を蒸し器に入れると頼んでおいた熱燗が丁度いい頃合いに温まって出てきた

どうぞと趣味のいい備前焼のお猪口を置くとお酌をしてくれた

しばらくして蒸したての金目鯛の蒸し物が出てきた

箸で2つに割ると中には蓮根餅の柔らかく蒸されたのが忍ばせてあり出汁の効いた餡と針生姜が魚の旨味をうまく引き出していたf:id:habbule-no-neko:20240330201642j:image

☆レシピ☆

「金目鯛と蓮根餅の蒸し物」

(材料)4人分

金目鯛 2尾

蓮根 300g

片栗粉 少々

うどん出汁つゆ 1パックf:id:habbule-no-neko:20240330214639j:image

片栗粉か葛粉 適量

新生姜 適量

三つ葉飾り用

(作り方)

・新生姜は針生姜に切っておく

三つ葉を洗って用意しておく

・金目鯛は鱗を取り頭を落として骨を取り身だけ切り出す

身の中の骨も骨抜きで取り除きすべて食べられる状態にする

水でさっと洗ってバットに酒(分量外)を入れて金目鯛の身を洗いキッチンペーパーで拭き取る

表裏さっとほんの軽く塩してバットに置きラップして冷蔵庫に置いておく

・最初に片栗粉を少量のうどんつゆで溶かしつゆを入れた鍋に入れ全体をよく混ぜて火にかけトロミをつける

・蓮根を洗って皮をむいてすりおろし水分を少し絞って捨て片栗粉少々する

・器を用意して蓮根を丸めて金目鯛で上から包んで入れていく

・蒸し器の蓋に日本手ぬぐいを巻いてつゆが滴らないようにする

蒸し器の底に水を張り沸騰したら器を置いた蒸し器をセットして蓋をして10分蒸す

・蒸し上がれば出汁をはり上に針生姜と三つ葉を飾って熱々をお出しする

 

うまい 思わずこぼれた独り言に満足そうに微笑むと女将は座敷の客達にまた次の料理を運びはじめた

それにしても小さな店とはいえ女将一人で切り盛りするのはさぞや大変だろう

美しい顔立ちに少し影を感じるのは夫を亡くした不幸からくるものなのか

だがその憂いを含んだ儚げな美しさは彼女の哀しみを餌にしてより一層その美しさを際立たせていた

そんな危うさにつけいる男たちもいるのであろう

カウンターに亡くなった夫の写真を置いているのもちょっとしたお守り代わりのつもりなのかもしれない

里芋の素揚げ肉味噌餡かけ第二話


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しばらく店はワイワイと賑わった

常連の老客主催の同窓会であろう

勝手知ったる様子で仲間と軽口を言いながらそれぞれ小上がりのテーブルについた

女将はちょっと失礼と客たちに挨拶にむかいそのまましばらくバタバタともてなしに忙しそうだった

出された三杯酢の品をつまみながらしばらくビールを飲んだ

久しぶりに味わうほんのりした甘酢の味に 家に置いてきた家内を思い出した

あいつのはいつも酢が効きすぎるんだな

この方が健康にいいのよが口癖の家内は健康志向が強く休みの日もジムに通い詰めだ

あなたも少しは走ったら?

そう言われるのが嫌で土日はそれぞれ別の楽しみをみつけ別行動で過ごす

家にいた頃から単身赴任みたいなものだった

ま 今頃はせいぜい気楽にジムの仲間と楽しくやっているんだろう

キザキさんという女友達と主催してジムの休みの日や土日の夜は近くに皆で飲みに行くのが楽しみなようだ

食卓に俺用の健康な食事を置いて出かける

キザキさんのご主人は開業医をしているらしく家内の健康志向もその内科のご主人からの受け売りのようだ

その割に飲みに行くのは体に良くないんじゃないのかと聞くと

「飲むと楽しくなっていっぱい笑うでしょ 笑うと免疫力が上がるのよ」

ということらしい

楽しいこともやらなくちゃ鍛えるだけじゃダメなのよ 行ってきます

偉そうにいうのを聞き流しながら一人食卓に残された食事をビールで流し込む

単身赴任になってお互い気楽になったのかな

独り身の寂しさも気楽さと感じられる年頃になったのかもしれない

考え事をしてテーブルの上に長く置かれたコップのフチに水滴が垂れ始めた

波々とビールを足してゆっくりと口に運ぶ

「それでは久しぶりの再会を祝して乾杯!」

座敷の客達が賑やかに宴会を始めた頃

パタパタと女将がカウンターに戻ってきた

ふぅ バタバタして御免なさいね今夜は賑やかになりそうで

これ良かったらとビールの脇に里芋の餡掛けを置くとおビールおかわりいかがかしらと聞きカウンターの奥に酒を取りに行った
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☆レシピ☆

「里芋の素揚げ肉味噌餡かけ」

(材料)4人分

里芋 12個

合挽き肉 150g

調味料A

塩 豆板醤 ニンニクチューブ 醤油 砂糖

全て少々

調味料B

水 150cc

中華スープの素 小1/2

砂糖 小1/2

醤油 小1/2

味噌 小1/2

仕上げ用に片栗粉や葛粉でトロミをつける

葱の小口切り 少々

(作り方)

・里芋の皮をむいて途中油の中でかき混ぜながら竹串でスッと通るまで素揚げする

キッチンペーパーにあげて油を落とす

・フライパンに油を少しひき調味料Aと合挽き肉をいれて炒める

・火が通れば調味料Bを入れて少し煮る

使う調味料によって味の濃さが変わるので味見をして濃ければ水を足し薄ければ味を足して下さい

スープを適量取り出し片栗粉と合わせてフライパンに戻してトロミをつける

・器に揚げた里芋を盛り付け上から餡をかけてネギを散らして出来上がり

 

女将が冷えたビールを運んできて新しいコップに注いでくれた

この女将が彼の駆け落ちの相手なのか

小気味よく店を動き回る女将

相手は身の上を知られているとは思いもしないだろうこの場面に密やかな優越感が湧いてくる

と同時に忘れていた記憶がじんわり脳裏に滲み上がってきた

彼の記憶

それはとうてい貧乏学生には似つかわしくない繁華街の高級クラブの店の入口へ女に傘をさして送り届けている彼の姿だった

女は一見高そうな服に身を包みすまなそうに彼に向かって何か言ったあと2人は見つめ合って女は店に消えていった

彼が研究室に顔を出さなくなったのはその2週間ほどあとのことだった

20年ぶりに辻褄のあった気がした

彼女の着ていた高級そうな服は他の学生たちには良いところのお嬢さんに見えたのかもしれない

それほどに当時から彼女の容貌はいわゆるホステスというようなスレた感じの全くしないどちらかというと素人の女のそれだった

当時もどうしてあの美しい純真無垢そうな女があんな店に入っていくのだろうと違和感を覚えたことがその景色と共に思い返された

2本目のビールを出したあと 座敷の客たちに追加の料理を出し終えた彼女がカウンターへと戻ってきた

一人記憶の波に翻弄されながら何も事情を知らない一見客となるべく慌てて皿の料理を口に運んだ

ホックリと揚がった里芋の食感が楽しい

肉味噌餡が油で揚げた里芋との相性もよく旨味とコクのある一品だった