部屋中に漂う百合の香り。
微かな夏の記憶は、ピアノのレッスンの帰り道。
暑い中登り続ける坂道の、途中にあるお家の庭先に、美しく咲いた百合の花です。
うまく弾けなかった憂鬱な気持ちに、優雅な百合の花がハッとするほど美しく映りました。
花の美しさって、今よりも子ども時代の方がより鮮明に感じていたように思います。
大人になってからの記憶。
それは白百合の、香りの記憶です。
白百合といえば、キリスト教では大天使ガブリエルから聖母マリアへの受胎告知の際に渡す花です。
子ども達の幼稚園は引っ越しなどで別々でしたが、どちらもカトリックの幼稚園だったのでクリスマスには必ずキリスト誕生の聖劇が行われました。
幼稚園のお玄関にあるマリア様のお像にも、この季節になるとよく白百合の花が飾られていて、白百合といえば幼稚園の香り。
懐かしいお友達や先生方のお顔が浮かぶお花です。
あの頃の子ども達の屈託のない笑顔。
今はスマホの写真フォルダでしか見ることのできないあの笑顔(笑)
それでも私にとっては、輝いていた日々の素敵な思い出です。