暗がりに妖しく光る金彩の美しさ
「陰翳礼讃」
谷崎潤一郎の随筆に
その本質が記されています
今年も 息子の厄除けを願って飾る
「五月人形」の鎧飾り
随筆にも書かれている「漆塗り」の美しさは
それが施されている衝立と鎧飾りの間にある
提灯のほの灯りを 柔らかく反射して
厳かに魅せてくれます
暗がりに鈍い光を放つ 金の装飾が
光と闇の間の色を 幾重にも重ねたように
深い輝きをもって 浮かびあがります
大阪の京橋から歩いてすぐの所に
「藤田美術館」というのがあります
こちらの美術館は 幾多の宝物眠る蔵の中に入っていくかのような入口から始まります
中は深い闇のなか
まるで本当に蔵の中にいるような心持ちで スポットライトに照らされた美術品を眺めることになります
緊張感さえ感じる 闇が生み出す静謐さの中
そこに立つ自分自身さえも
その空間を構成する一つであるかのように振る舞うよう
その装置の一部として機能することを求められます
そこにあるものすべてが
「美しく」
あるように。。
ただ美術品を見せるだけではない
真の「美の空間」
それを構成する大きな要素が
「闇」なのです
「闇」が静謐さを生み出すなら
「闇」に灯される「あかり」は
「くつろぎ」や「穏やかさ」を生み出します
我が家のリビングでは
夕景の頃 ひとつひとつ
間接照明とスタンドライトの明かりをともすことから
夜迎えを始めます
一日の終わりには
灯りをひとつひとつ消していくことで
今日の家事を終える余韻を感じます
闇と光と心
その繋がりをあらためて考えてみると
暮らしをより美しく深く味わうツールを
手に入れることが出来るかもしれません