自分に一滴もその才能がないからか
理系の男子にトキメキます
同じ趣味の男子には競争心が芽生えますが
リケ男だけは
その専門用語豊富な話を聞くと
すぐさま両の手を胸の前で組み
目にはキラキラと星が瞬きます
その理系知識の集大成の水門は
私にとって知性のつまった美しい建造物
そしてそれを解説して下さる
「西大阪治水事務所」の方々は
何を聞いても即座に資料と
その専門知識をもって応えて下さり
終始 私の手は胸の前で組まれ
目はキラキラ うっとりしておりました
そんな私の推しツアー
「アーチ型水門試験運転」について書いてみたいと思います
私のようにこういったモノにときめく
レアなタイプが近頃増えているようで
普段一般の人が立ち入れないインフラ施設(水門やダム 地下の雨水貯留施設など)を見るツアーがたくさん企画されており
そういった流れを
「インフラツーリズム」といいます
そして今回お話する「水門試験運転」は
数ある水門のタイプの中でも特に私が美しいと思うアーチ型水門で行われるものを見学してきました
なぜアーチ型なのかなど詳しくは前回のブログに詳しく書きましたが少しおさらいを。
世界においても船の航行と水門の機能を備えたアーチ型水門の設置は稀で
オランダのレック川にアーチ型の水門がありますがこちらは水位調整として使われている水門のようです
そんな世界でも貴重なアーチ型水門が日本に三基あり それはすべて大阪にあります
安治川・尻無川・木津川の河口にあるその水門が時代のニーズとともに閉鎖が決定し
そのうちよくあるローラーゲート式に変わることが決定しました
いずれ消えゆくこのアーチ型水門は維持管理のため試験運転が定期的に実施されており
一般にも公開されています
通年1ヶ月に1回
6月から10月は月2回の試験運転見学会
参加は無料で
大阪府のホームページから申し込みます
ちなみに水門の色はそれぞれ
安治川が赤 尻無川が青 木津川が緑ですが
色に特に意味はないそうです
試験運転当日は現地集合なのですが
すべての水門が駅から随分離れているので
正直結構大変でした
道に迷うこともあり 見学に行かれる際は 時間に余裕をもって行かれることをオススメします
見学内容はアーチ型水門の試験運転を管理棟の屋上から見学させていただくというもの
水門が非常時にきちんと動作するかどうかの確認を非常時と同じ手順ですべて行います
見学は水門を倒すところまで。
そこで解散となり
建物から出ることになりますが
その後 試験運転では引き続き
倒した水門を再び同じ手順で立ち上げ
水門の洗浄などのメンテナンスも行います
見学は1時間ほどですが
試験運転全体は
アーチ型水門を上下させるのに各30分
その前後の作業にも時間がかかり
終了まで2時間以上必要です
私はすべて見たかったので
現地集合して当日申し込まれた皆さんと一緒に屋上から水門を倒すのを見学し
解散後 すぐ近くにある「渡船場」から船に乗って水門が立ち上がるのを見学しました
安治川水門だけは43号線という大きな道路が水門のある川の上を通っていて
その歩道から真正面にアーチ型水門を見ることが出来ます
西日さす逆光に立ち上がっていく水門は
海を照らす光に照らされて
美しいことこの上ありませんでした!
ところで サラッと書きましたが
渡船?と思いませんでしたか?
この現代に大阪の街に
「渡し船」があるの?と
私は大阪に住むまで知らなくて
初めて見た時はビックリしました
あるんです しかも8箇所!
私が初めて渡船に乗ったのは
自転車で市内を探検していたときのこと
海が見たくて自宅からひたすら海を目指して走っていたら迷子になり
海の向こうに行きたい陸があるのに渡る道がない!と途方にくれていたら「渡船場」と書かれた案内を見て助かったぁ!と自転車ごと運んでいただいたのが渡船初体験でした
ちなみに何度乗船しても無料♫
渡船は大阪市の管轄になります
短い航路ですが川の上から眺める景色は
いつもと違いワクワクします!
今回いくつか渡船にお世話になりましたが
お船の船長さんたちは皆さん本当に親切で
何度も往復する私が恐縮してお礼を言うと 笑顔で全然構いませんよ~!と仰って下さり
川の話 船の話など
いろんなお話も聞かせて下さいました
さてさて いよいよ水門試験運転について
最初に見学に行った
安治川水門を例にお話ししましょう
安治川水門は最寄り駅がJR弁天町駅
駅の壁にもアーチ型水門が描かれていました
随分迷いながら歩いて水門に到着
門は閉まっていますが集合時間になると
阿波座の西大阪治水事務所から担当の方々が続々と車で到着します
早めに着くと
人気のない門の前で不安になりますが
ここは落ち着いて皆さんの到着を待ちます
竣工当時の石碑に
当時の市長の思いが書かれています
高潮の災害から守るため築くとの文字
前回の記事でも書きましたが やはり当初は高潮しか対策基準になっていなかった様です
その後の阪神淡路大震災の震度
対策基準は随分かわり対応しきれなくなり アーチ型からゲート式へと変わらざるを得ないことがこの石碑からも推察されます
また尻無川水門では建設当時
ニューマチック工法という空気圧を使う工法で水門を建設していたのですが
建設中に底で作業していた方々が下敷きになり亡くなるという痛ましい事故がありました
水門脇には慰霊碑が建てられ
今もその犠牲を後世に伝えています
いよいよ試験運転
係の方に先導されて敷地内に入れて頂きます
普段は絶対に立ち入り禁止のエリアです
管理棟の屋上に上がると海の景色!
間近にアーチ型水門が見られます
安治川水門と書かれた建屋はアーチ型水門を動かす巨大なワイヤーを巻き取るための施設
危険なので係の方しか入れません
中では係の方が作業されていました
よく見るとあちらこちらにたくさんの方々が配置につかれ それぞれ試験運転の経過を観察報告するための数値を取られていたり
設備の様子を観察 メンテナンスされたり
それ以外にも話を聞くと
維持管理の為の浚渫船やダイバーさんの仕事
運転を海から見守る船の方などなど
説明員の方々以外にも本当にたくさんの人が試験運転に従事されていることに驚きました
というのも 実は
私にとっては初めての水門試験運転
正直インフラツーリズムにワクワクして
普段見られない所見てみたい!
とちょっぴりうわついた気持ちの参加でした
しかし
説明員の方の説明を聞き 試験運転に従事されている方々の真摯な業務をみるにつけ
この試験運転は
「私たちの命を守るための仕事」なんだ
とつくづく感じ
軽い気持ちで参加した自分が恥ずかしく
本気で大阪の街を守ろうとしてくれている
治水を担う皆さんに頭の下がる思いでした
試験運転はまず海から小型の船が颯爽とやってくる所から始まります
これは今から水門を閉める際に
運搬船やトレジャーボート
水のアクティビティを行う人たちが
普段開いている水路が閉じられていることで事故が起こることのない様見張る警戒船です
この警戒船はここから水門が締まり
また開放されて安全が確認されるまで
2時間ちょっとの長い時間を
猛暑の日も極寒の日も雨の日も雪の日も
流れる川の上で 船が流されてぶつかったり水門から離れないよう絶えず注意し舵を取りエンジンをこまめに調整して漂いながら
船が近寄らないように警戒を続けます
試験の日はこの航路を使う船や工場に事前にスケジュールを連絡して
この日のこの時間帯に船を出すことのない様注意を促しています
もちろん一般にも情報を公開しているので
川を利用するあらゆる人々は事前に航行する川の情報をとって航行計画を立てるべきです
しかし航路の情報を調べなかったトレジャーボートや水のアクティビティを楽しむような人々があやまって水路に入ってくることもあるそうで トレジャーボートなどがすごい勢いで締まっていく水門をくぐり抜けるような危険なこともあるそうです
また
木津川水門を見学していたときにはあと少しで試験運転が終わりそうというタイミングで
荷物を積んだ大きな船がやってきて
そこに渡船の運行も絡んで川が大混雑に!
試験終了の合図がまだだったので四苦八苦して舵を取りながら手前で待機することになり
警戒船の方が甲板にでて 同じく甲板に降りてきた荷積み船のかたと直接話して通って良しの指示をされたりしていました
見ているこちらもハラハラドキドキ
本当に責任のある難しいお仕事です
さて警戒船に見とれていると大きなサイレンの音が聞こえてきました
10秒が3回
これが「今から水門閉鎖します」の合図です
試験運転の始まりと終わりに鳴らします
終了の合図を帰り道に聞きましたが
町一帯に響き渡っていました
地域に住んでいる方々にはこの音が暮らしの音なんだろうなぁと。
アーチ型水門は町の「音の風景」でもあるんだと感じました
その始まりの合図と共に水門に掲げられている信号を赤に点灯
海の底から緩衝チェーンが上がってきます
これで船の通行を禁止します
そして次に普段は主水門にゴミが入らないように閉じている防塵スクリーンを全開します
次に副水門を全開します
副水門は屋上から見えなくてあとで撮影したものがわかりやすいのでそちらを載せます
右の開きかけている扉がそうです
副水門はアーチ型水門を倒したり上げたりする時の水圧を逃がすための門です
副水門が開くとゆっくりアーチ型水門が倒れていきます
アーチ型水門の開閉は
屋上横の建屋上部にあるワイヤー巻き取りの部屋からワイヤーを出したり巻き取ったりすることで行います
ワイヤーは水門横にあるガイドに沿って動きます
アーチ型水門本体はとても巨大な鉄の塊に見えますが中は空洞になっていて軽量化されています
倒すと中にヘドロが流入するので
本体を洗浄する装置が入っています
洗浄した水は水門にある穴から排出されます
外側の汚れは外から放水銃で洗浄します
倒している間 治水事務所の方々が詳しく説明して下さいます
そしてどんな質問にも答えてくださいました
今回の試験運転は阿波座の事務所から
遠隔で操作しています
こちらがその治水事務所のお部屋
大阪の地形を横から見た図
上町台地が唯一高台です
なので海から水が押し寄せた時
その被害が広範囲に渡るのです
護岸の高さは水門より海側が高さ8メートル
水門より陸側が高さ5メートル
これはアーチ型水門が大活躍した
2018年の台風21号の時の様子
死者14人 台風で関西空港連絡橋にタンカーがぶつかって橋が壊れました
この台風 我が家はなんとか無事でしたが
ご近所もアンテナが飛んだりベランダの柵が飛んだり町はめちゃくちゃでした
この時は高潮を警戒して水門を倒し
水門の高さギリギリまで水が来ましたが
なんとか市内への水の流入を
回避する事が出来ました
国土交通省によれば水門などの効果で回避した被害推定額は17兆円とも言われています
何でも聞いてくださいとのことだったので
緊急時の対応がどのようになっているのか聞いてみました
台風が来ることが予想される場合は
大きさに伴って事前に対策がなされ
必要な場合水門が閉鎖されます
Jアラートをもとに津波 大津波警報以上で水門は自動的に閉鎖されます
また各水門の近くには緊急時
駆けつけて水門を閉鎖できるようあらかじめ担当者が府の職員の中から決められており
水門の閉鎖は遠隔操作 治水事務所の職員 近隣の府の職員(特定配備職員)などが行えるように幾重にも対策がなされています
電源についても電力会社からの電力と
自家発電の両方を普段から使用しており
緊急時にも対応
ちなみに治水事務所の職員ほかそれぞれが
地震などの緊急時には駆けつける場所があらかじめ決められており
移動手段がない場合
近隣の府の施設に行き そこで対応にあたることが決まられているそうです
この日説明して下さった方は
「僕は自宅近くの下水処理施設に行くように決められているんです」と
そこから状況を見て出来る限りの対応をする
そのことも細かく決められているそう
台風がくるとわかると対策本部が設置され
事務所には寝泊まりする設備もあり
接近予想の12時間前から準備が行われます
高潮が予想されると早めに防潮扉を閉め
その準備は地元の水防団と共に行われます
台風が予想される毎に全力で被害を防ぐ行動を治水事務所の方々府の職員の方々が私たちの知らないところで行なって下さっています
改めてそのことを知った私は思わず
「私たちの暮らしを守るために本気で取り組んで下さってるんですね」
とお伝えしたら
「それが私たちの仕事ですから」
と少し誇らしげに仰ったお姿が
プライドと責任感をもってお仕事にあたられているのだなと心から頼もしく
私のココロがキュンッ♫
となった瞬間でした!
それはさておき
倒した水底は水が堰き止められるよう
キチンとアーチの底と川底がくっつくように整備されています
定期的に浚渫(水底をさらって土砂などを取り除く作業)し ダイバーの方がヘドロで濁った水のなか潜水して水底を撮影し確認しているそうです
ちなみに
内陸で過ごす私たちのゴミが川を流れて海に出てしまったのを地元の企業の方々や自治体で定期的に掃除して下さっているとのこと
全国の港ではそれぞれそのような活動がなされているそうです
知らなかった
そんな風に知らないところで私たちの後始末をして下さっている事を知り
府や市の仕事の幅広さに改めて驚きます
完全に倒れたところで見学終了
お礼を言って施設を出ました
皆さん帰られましたが私は向こうに見える橋国道43号線の歩道に移動して元に戻す様子を見学します
さっきまでこちらの建物の屋上から見学していました
ではここで帰り際に撮影した管理棟の内部の様子を少し紹介
古い古い管理棟はレトロ満載でした
フォントフェチの私にはたまらない空間です
さて気持ちは橋の上に戻り
ここから先ほどと逆の手順で
元の状態に戻るのを眺めます
水門の海側では変わらず警戒船が監視しています
水門の内部と外からの洗浄が始まりました
内部からは穴をつたって洗浄した水が出てきます
逆光に聳えるアーチ型水門の雄姿!
あまりの神々しさに
もはや茅の輪に思えてきます
〈茅の輪〉
6月と12月神社に設える茅で作られた輪
作法にのっとりくぐることで厄を払い無病息災を祈願します
水門が立ち上がりそれぞれの扉が順番に閉められチェーンが降ろされると試験運転終了
大音量の終了のサイレンと共に
警戒船が帰っていきます
この日は気温が高く西日に照らされながら熱中症気味に最後まで見学しました
こんな日に最後まで見ている物好きは私しかおらず それを労って下さったのか橋の上の私に警戒船の方が手を振って下さって感激!
もちろん思いっきり振り返しました(笑)
帰り道
駅に着くと自動販売機を見つけ
「水。。水をぉ~!」とコインを投入
ラインナップの中に噂の?(笑)
「水ゼリー」なるものを見つけました
こちらはacure(アクア)というJR東日本の駅ナカ自動販売機をメインに展開しているメーカーのもので東でしか手に入らなかったものが西でも買えるようになっていたのです!
これが噂の♫と迷わず選択
よく振って飲む物らしく最初ジタバタしましたが ようやく水分補給完了
ラムネ味の爽やかで滑らかな飲み物でした
レアなものもいただけて
思い出に残る最高のインフラツーリズム体験とさせていただけました!
ここまでの記事を
3ヶ月ほど前に見学していた時から少しづつ書き起こしていました
途中 体調不良や家の行事などで
書き上げるのが随分遅くなってしまいました
そんな折 起こった能登半島地震
きっと能登においても様々な防災対策は行われていたであろうに
そんな努力も凌駕するほどの激しい地殻変動により大災害となってしまいました
今もたくさんの方々が雪の中救出 復旧にあたられています
ご安全にと願うばかりです
今回の水門見学を経て
改めて 防災の任務を担う方々の業務の厳しさと仕事に対する責任感の強さへの
理解を深めたような気が致します
自然の激しさ厳しさと共に
様々な方々に知らず守られている私たちの日々の暮らしの有り難さを
改めて考えるきっかけとさせて頂きました
西大阪治水事務所のみなさま
本当にありがとうございました
そして能登半島の復旧 復興を担っておられる皆様のご安全と
被災者の皆様に1日でも早く
心穏やかに過ごす日常が訪れますよう
心よりお祈り申し上げます