美味しいしあわせ

くつろぎのひと時のお料理やお菓子とお酒 季節の花と緑

里芋の素揚げ肉味噌餡かけ第二話


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しばらく店はワイワイと賑わった

常連の老客主催の同窓会であろう

勝手知ったる様子で仲間と軽口を言いながらそれぞれ小上がりのテーブルについた

女将はちょっと失礼と客たちに挨拶にむかいそのまましばらくバタバタともてなしに忙しそうだった

出された三杯酢の品をつまみながらしばらくビールを飲んだ

久しぶりに味わうほんのりした甘酢の味に 家に置いてきた家内を思い出した

あいつのはいつも酢が効きすぎるんだな

この方が健康にいいのよが口癖の家内は健康志向が強く休みの日もジムに通い詰めだ

あなたも少しは走ったら?

そう言われるのが嫌で土日はそれぞれ別の楽しみをみつけ別行動で過ごす

家にいた頃から単身赴任みたいなものだった

ま 今頃はせいぜい気楽にジムの仲間と楽しくやっているんだろう

キザキさんという女友達と主催してジムの休みの日や土日の夜は近くに皆で飲みに行くのが楽しみなようだ

食卓に俺用の健康な食事を置いて出かける

キザキさんのご主人は開業医をしているらしく家内の健康志向もその内科のご主人からの受け売りのようだ

その割に飲みに行くのは体に良くないんじゃないのかと聞くと

「飲むと楽しくなっていっぱい笑うでしょ 笑うと免疫力が上がるのよ」

ということらしい

楽しいこともやらなくちゃ鍛えるだけじゃダメなのよ 行ってきます

偉そうにいうのを聞き流しながら一人食卓に残された食事をビールで流し込む

単身赴任になってお互い気楽になったのかな

独り身の寂しさも気楽さと感じられる年頃になったのかもしれない

考え事をしてテーブルの上に長く置かれたコップのフチに水滴が垂れ始めた

波々とビールを足してゆっくりと口に運ぶ

「それでは久しぶりの再会を祝して乾杯!」

座敷の客達が賑やかに宴会を始めた頃

パタパタと女将がカウンターに戻ってきた

ふぅ バタバタして御免なさいね今夜は賑やかになりそうで

これ良かったらとビールの脇に里芋の餡掛けを置くとおビールおかわりいかがかしらと聞きカウンターの奥に酒を取りに行った
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☆レシピ☆

「里芋の素揚げ肉味噌餡かけ」

(材料)4人分

里芋 12個

合挽き肉 150g

調味料A

塩 豆板醤 ニンニクチューブ 醤油 砂糖

全て少々

調味料B

水 150cc

中華スープの素 小1/2

砂糖 小1/2

醤油 小1/2

味噌 小1/2

仕上げ用に片栗粉や葛粉でトロミをつける

葱の小口切り 少々

(作り方)

・里芋の皮をむいて途中油の中でかき混ぜながら竹串でスッと通るまで素揚げする

キッチンペーパーにあげて油を落とす

・フライパンに油を少しひき調味料Aと合挽き肉をいれて炒める

・火が通れば調味料Bを入れて少し煮る

使う調味料によって味の濃さが変わるので味見をして濃ければ水を足し薄ければ味を足して下さい

スープを適量取り出し片栗粉と合わせてフライパンに戻してトロミをつける

・器に揚げた里芋を盛り付け上から餡をかけてネギを散らして出来上がり

 

女将が冷えたビールを運んできて新しいコップに注いでくれた

この女将が彼の駆け落ちの相手なのか

小気味よく店を動き回る女将

相手は身の上を知られているとは思いもしないだろうこの場面に密やかな優越感が湧いてくる

と同時に忘れていた記憶がじんわり脳裏に滲み上がってきた

彼の記憶

それはとうてい貧乏学生には似つかわしくない繁華街の高級クラブの店の入口へ女に傘をさして送り届けている彼の姿だった

女は一見高そうな服に身を包みすまなそうに彼に向かって何か言ったあと2人は見つめ合って女は店に消えていった

彼が研究室に顔を出さなくなったのはその2週間ほどあとのことだった

20年ぶりに辻褄のあった気がした

彼女の着ていた高級そうな服は他の学生たちには良いところのお嬢さんに見えたのかもしれない

それほどに当時から彼女の容貌はいわゆるホステスというようなスレた感じの全くしないどちらかというと素人の女のそれだった

当時もどうしてあの美しい純真無垢そうな女があんな店に入っていくのだろうと違和感を覚えたことがその景色と共に思い返された

2本目のビールを出したあと 座敷の客たちに追加の料理を出し終えた彼女がカウンターへと戻ってきた

一人記憶の波に翻弄されながら何も事情を知らない一見客となるべく慌てて皿の料理を口に運んだ

ホックリと揚がった里芋の食感が楽しい

肉味噌餡が油で揚げた里芋との相性もよく旨味とコクのある一品だった