美味しいしあわせ

くつろぎのひと時のお料理やお菓子とお酒 季節の花と緑

ロスト ヴィーナス   キウイとラムのカクテル 


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前回のギムレットに味をしめて カクテルレシピ♫

今回もハードボイルドにお届けします(笑)

今回は「J」の元秘書 シルヴィアとのお話

さてさて

キウイとラムで作るカクテルは

どんなお味が するかしらん♫

 

「ロスト ヴィーナス 

       キウイとラムのカクテル」

俺の名はJ

とある街で しがない探偵をやっている 

依頼人の秘密は厳守

だから今日あったことは誰にも喋らない

ただ もて余す苦い気持ちを

紛らわせるために 

このBARにやってくる

              カラン♪

バーテンダーのNが無言で頷く

「キウイとラムで

何かカクテルを作ってくれないか」

Nは唇の端を片側だけ上げ

微かな笑みを浮かべて 頷いた

カクテルにするなら

この2つは 最高の相性だ

そう

かつての俺とシルヴィアのように。。

シルヴィアは俺の元秘書

2年前のあの事件を最後に

俺のもとから 彼女は去った

シルヴィア 

俺の シルヴィ

飴色の柔らかな長い髪は なめらかにカーヴを描いて 

たっぷりとしたその胸元で揺れる

長い睫毛は 

ある時は獣のような瞳を

そしてある時は 

憂いを含んだ彼女の瞳を

耐えず 濡らしていた

自立した女性の強さと

俺にだけみせる 

柔らかな弱さを持つ

俺の女神だった

「ねぇ キウイとラムって 

カクテルにすると 最高の相性なのよ

あなたと私みたいにね。。」

そう言って

悲しげに微笑んだ顔に

不吉な予感がしたのは 

やはり間違いではなかったことを

翌朝

1人目覚めた 晴天の朝に知った

公園の見える俺の部屋の窓は開けられ

カーテンが眩しい日差しに揺れて

俺の肩をそっとくすぐる

その柔らかさに目覚めた

ひとり。。

さぁ!起きなさい 

そして

あなたは 一人でも大丈夫

そう言いたかったのだろうと 

今でも思う

その通り

俺は一人でも大丈夫

今までもそうやって生きてきた

けれど

出会ってしまったお前との居心地の良さを

知らなかった頃に 

俺は まだ 戻れずにいる

「どうぞ」

Nの太い指につままれた

グラスの細いステムが突き出される

「カクテルの名前は?」

そう聞いた俺に Nが応える

「ロスト ヴィーナス」

そういえば 

シルヴィと最後に飲(や)ったのも

このBARだった

「なるほど。。いい名前だ」

そういう俺に 

Nは 静かに寂しげな笑顔をくれて

カウンターの次の客の飲み物を作りに戻る

ロスト ヴィーナス か。。

今頃 

俺なしでいる シルヴィの面影を思い浮かべ 一口飲る

ラムの熱帯を思わせる強さとクセのある味に 

キウイの切ない酸味と熟した甘みが溶け合い

一つになっていた

仄暗い店の中で

僅かな灯りに照らされた

艷やかなカクテルは

彼女の滑らかな肌を 思い出させる

二杯目は強い酒にしよう

そうでなければ 今夜はどうにも

眠れそうにない。。
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☆レシピ☆

 

「ロスト ヴィーナス 

      キウイとラムのカクテル」

(材料)

ゴールドキウイ 1個

(大きなものなら半分)

ホワイトラム 45ml

三温糖 2t(ティースプーン2杯)

氷 カクテルグラスに7分目ほどの量

※ミキサーを使いますが 必ず氷も砕けるタイプのミキサーを使用して下さい

刃が欠けると危険です

ミキサーを回す時は少しづつ

砕けて来てから連続で回して下さい

その方がミキサーに負荷がかかりにくいです

買ってきた氷がベストですが

家庭用の氷の方が柔らかいので回しやすいと思います

 

(作り方)

・カクテルグラスに分量の氷を入れてグラスを冷やす

・キウイの皮をむき 実をざく切りする

・小さなミキサーに材料すべて入れてグラスを冷やしていた氷も水分を捨てて氷だけミキサーに入れる

・ミキサーで撹拌して氷をクラッシュドアイスほどにする

・混ぜ合わさったら止めてグラスに注ぐ

・冷たいうちに 乾杯♫

 

[おまけ]

BARからの帰り道

トレンチコートのポケットに手を突っ込んで

中にある小銭をなでる

3ポンド7ペンス

ポケットの中身を見なくても いくらあるのか言い当てる

指先の感覚を研ぎ澄ませる訓練は

いつの間にか

Jのお決まりの習慣となっていた

「そういえば

キウイとラム。。

オーストラリアなら 

肉料理になっちまうな」

いつもより飲みすぎた夜は

思考が身体をはみ出して

思いもかけない場所に羽ばたいていく

シルヴィ

案外 近くにいるのかもしれない

そんな願望にも似た思いが

Jの心をかすめて

街を照らす月へと 飛び去っていった