
最近街の景色が目覚ましく変わっている大阪のウメキタエリア
かつてJRの貨物ヤードがあった場所が「グラングリーン」という緑溢れる公園を中心に新たな高層ビルが立ち並ぶ先進的な街へと変わり続けています

その新たなまち創りの一環として旧大阪中央郵便局だった敷地を含む一帯を新たに「JP(JAPAN POST)タワー」として建て直す工事がずいぶん前から行われていましたが2024年7月にオープンとなりました

1階の一角には郵便局があり入口には大阪の名物名所が描かれたポスト
中では様々コラボ商品も販売されています
また地下1階から6階までは「KITTE」という商業施設になっており全国各地を旅するようにお買い物ができる地方のアンテナショップが並んでいます
冷蔵冷凍のものも並んでいるので地方に旅した時に目にした美味しいものも手に入り
またお土産に買いそびれた民芸品なども数々手に入ります
レストランも充実していて旅好きな人だけが知っている地方の美味しいお店や名物が食べられるのが嬉しい
その土地に旅したけれど食べそびれたお料理や行けなかったお店のお料理がここにくればあるかもしれません
JPタワーでは中間階層にオフィスが入居し
上部のフロアに 今回訪れた
「THE OSAKA STATION HOTEL, Autograph Collection」があります

入口はKITTE一階にあります
中の見えないシンプルなドアの向こうには
鉄分たっぷりのこだわりのホテル
「旅する気分」でもてなして下さるオトナの上質な空間が広がっています
「鉄分」とは
鉄道にまつわるこだわりたっぷりのホテル
それが大阪ステーションホテルなのです
でもなぜJPタワーで郵便ではなく鉄道なのか
それはこの土地の持つ古い歴史から語らねばなりません
旧大阪中央郵便局があったこの地
国鉄とは今のJRの前身
鉄道をまだ国が管理していた頃の呼び名です
日本の鉄道開業は明治5年(1872年)
10月14日新橋と横浜間が開通したのが始まり
その2年後
2番目の路線として大阪-神戸間が明治7年(1874年)5月11日に開通しました
この初代大阪駅
そもそも始めは当時大阪が最も賑わっていた堂島辺りに駅の建設が予定されていたのですが地元住民の反対にあい新たに用地を探すことに。
当時梅田の語源である「埋め田」というような田んぼとお墓しかないようなこの土地に駅舎を建てることが決定されます
ハイカラなレンガ作りの大阪駅舎が完成すると「大阪すてん所」と呼ばれたちまち新名所となりお弁当持参で駅を眺める人々が大勢訪れたそうです
それから2代目駅舎がほぼ今の大阪駅の場所に移転して建てられ
JRの現在の大阪駅は5代目
人々を汽車で運ぶためだけに建てられた駅舎はいまやレストラン オフィス ホテルなど多様な役割が与えられています
さて話は元に戻ってJPタワー
大阪梅田の発展の祖ともいえる大阪駅のあったこのビルは日本郵便と共にJR西日本もディベロッパーとして参加し 晴れてビルの頂に鉄分たっぷりの「大阪ステーションホテル」が開業される運びとなりました

このホテルはJR西日本のホテルとしてマリオットインターナショナルと提携したものです
なのでマリオットの世界各地の個性あふれる独立系ホテルのコレクションの一つとして
「Autograph Collection」と表記があります
その個性はホテル開業のオープニングセレモニーでも堂々披露されなんとテープカットはハサミではなく鉄道の改札鋏(かいさつきょう)で行ったとのこと
改札鋏とは昔切符が硬い紙で出来た硬券だった時代に切符の使用の始まりを知らせるため特有の鋏状のもので各駅に決められた型を抜き取るためのハサミ
今と違い自動改札機がなく駅に入場する時には駅員さんが一人ひとりの硬券を改札で受け取って改札鋏を入れていました
リズミカルなその所作は職人芸で「カチカチカチ」と鳴らす音は今でも私の耳にも残っています
そして
ステーションホテルのロゴマークは楕円のクリップのようなマークになっており
ホームページによると「歴史と未来が交差する時空の基点として 中央の空白部分は窓 車窓 周囲は線路をモチーフとし 輪の形状は繋がり 発展を意味しています。窓から見える旅を想起しながら 人と人 人と街をシームレスに紡いでいきます」とのこと
素敵なロゴマークだと思います

期待を胸に重厚感のある扉を開くとトンネルのような廊下
もう私の鉄分は廊下の壁の白い取っ手のようなものに反応して「ガイシがある〜!」と大喜び(笑)です
ガイシとは電車に電力を送る架線の電気を他に伝えて感電させないようにするためのもの
他にも天井を見上げると

これはきっと車輪をモチーフにしたライトね
ホテルの方に聞くと当たりでした
突き当りまでいくと車で来られた方の入口とつながっており受付カウンターには行先表示など鉄道アイテムの実物が飾られていました
ただし本物のDE51485は宮崎県延岡市
C581は京都にある鉄道博物館にあるのでこの二つだけはニセモノ
鉄道関係のご本の編集者さんがお見えになった時それを見抜かれて「さすがと思いました」とホテルの方がおっしゃっていました
テーブルにあるこのライトのモチーフはホテルのあちこちに見かけるものらしいのですが「カンテラ」を元にデザインされたものとのこと
カンテラとは昔懐中電灯などがない時代油を入れて灯し汽車に合図を送るために使われていた合図灯のことです
エレベーターホールに来ました
エレベーターの扉デザインはダイヤグラムのよう
ダイヤグラムとは列車の運行表のことで
停車時間 すれ違い 臨時列車 単線複線その他様々な条件を加味して作る電車の時刻表
特にお召し列車(天皇陛下の乗る列車)などはお召し列車と他の列車を並走させないとか追い抜かれてはダメとかお乗りになる皇族の方の安全を優先させるダイヤを組まなければならないので奇跡のようなダイヤグラムになるらしい
大変複雑なので条件によってはコンピューターでも作れるけれど突発的なトラブルの際や路線によっては専門の方(筋をひいて作るのでスジ屋と呼ばれているらしい)が作ると聞いています
数字に強くないと出来ないお仕事
昔娘の幼稚園の同級生のお兄ちゃんがダイヤグラムを組むのが趣味という方がいて
お母様が「今日も朝から架空のダイヤグラム組んで遊んでるのよ」
と呆れたような嬉しそうな顔をして話されていたのが忘れられません
さてさて そのエレベーターで29階へ
出ると一面にレンガの壁がお出迎え
こちらのレンガ
よく見ると積み方が変化しています
一番右が初代レンガ作りの駅舎の再現
イギリス積みやフランス積みが続いて
コーナーにはホテルオリジナルのレンガ積みとなります
明るいロビーに出るとウェルカムエッグと名付けられた枕木のような木のオブジェがお出迎えして
奥に見えているのが切符売り場をモチーフにしたチェックインカウンターとなります
このウェルカムエッグ
下が天王寺とのこと
膨らんだ立体的な形は大阪名物づぼらやなどの提灯型オブジェをモチーフにしているらしいです
よく見ると変な形に切り込まれたものが。
これは改札鋏で切符を切った形
他にも色んな改札鋏の形が隠れているので探して見て下さいね

チェックインカウンター奥の壁を見ると
これは本当にダイヤグラム!
こちらかつての新幹線のダイヤグラムを元に作った装飾壁とのこと ホテルの方が
「上が新大阪で一番下が小倉なんですよ」
「ん?JR西日本さんの管轄って博多までですよね どうして小倉?」
と聞くと
「デザイン会社がたまたま参考にしたダイヤグラムが小倉までだったらしいです」
とのこと
うーん!なんか腑に落ちない(笑)
でもそれも知ってる人にはオモシロポイントだと思います
振り返って向かいには鉄板焼のレストラン「瑞」(みずき)があります
瑞というお名前
JR西日本が誇る豪華車両「瑞風」(みずかぜ)から?とお聞きすると
「いやなんかそれとは関係ないらしいです」とスタッフの方はおっしゃっていました
旬の食材を使った鉄板焼
お値段はランチ29000円からディナー35000円からとなかなかいいお値段ですが
きっと美味しいんだろうなぁ。。

手前に待ち合わせに使える素敵なチェアがありました
もはやこの青もブルートレインの青みに見えます
隣にはこれも待ち合わせに使えるちょっとした広場
壁には現代アートの時計が時を刻みます
この時計何で表されているかわかりますか?
答えは 針が「ゴミ」そして
針を進めているのは「清掃員さん」です
このアートを作ったのは
オランダ人デザイナーのマーティン・バース
実際に12時間かけて撮影した映像を流して時を刻みます
世界に二つだけ
オランダとこのホテルにしかないアートです
ホテルは時を忘れる空間
本当は時計を設置することも稀なのですが
大阪駅にあった大時計へのオマージュ
そして駅で大活躍の清掃員さんと重なることからこの時計を設置したとのことでした
なんと途中で人が入れ替わったり(多分食事やトイレ休憩)12時には短針と長針のゴミが一つになってそれがまた二つにわけられていくなど見どころたっぷりらしいですよ
時計手前のライトは旧大阪駅舎にあったライトを現代風にアレンジしたもの
時計反対側には「ウォーターステーション」があります

こちらでは昔の新幹線で使われていた封筒型の紙コップでお水が自由にのめる水場
かつて大阪駅の前には水飲み場があったそうでそこで人々が集まり交流していたことへのオマージュとして設置されました
水都大阪にもピッタリの場所だと思います

この紙コップ懐かしい〜!
この時共に訪れた友人が実演してくれました
後ろにはとってもシックなガチャガチャコーナーがあります

一回500円
二種類ありポーションのお茶が出てくるものとヘッドマークピンが出てくるもの
私は迷わずヘッドマーク
雷鳥が欲しい〜!と願いながら回すと
やったぁ!当たり〜っ♫
帰って雷鳥に思い出たっぷりの主人にプレゼントしたら喜んでくれました
さて北側には全面ガラスのレストランが二つあります
こちらは「THE LOBBY LOUNGE」
天井の光る屋根は初代大阪駅の切妻屋根をイメージしたものでその下のオブジェは線路をイメージしており つながる緑や未来を表現したリングアートとのことです


梅田スカイビルの向こうには淀川も見えます
こちらはお茶やお酒を楽しむことが出来てアフタヌーンティーも頂けます
その隣にあるのが今回伺ったレストラン
「THE MOMENT」

豪華な食堂車をイメージしたつくりになっており世界を旅するように美味しいお料理が並びます
店内には鉄道に関するものや旅する人々の持ち物が飾られています

↑こちらには瑞風の模型がありました

窓際のお席に案内していただきました

この時一緒に行った友人にビュー席を譲りましたが私の席からも壁に鏡がはめ込まれていて鏡越しに背中のビューを眺める事ができて嬉しかったです
さて お楽しみのランチ!
ウェルカムドリンクとお野菜尽くしの前菜プレートが運ばれてきます
ランチはビュッフェ形式ですがメインと温料理も選べます
私はお魚のグリルにリゾットが添えられたものとロッシーニを選びました

「セビリアの理髪師」など数々のオペラを作曲した彼ですが
実は大の食通で自らレシピを考案するほど
フランスでは自らのサロンで豪華なお料理を日々振舞っていましたがその中の一つがこのお料理です
牛肉にフォアグラのソテーそして場合によってはトリュフもあしらう
好きなもの全部のせ!みたいな一品
私の記憶は ご成婚前の当時皇太子さまが
お肉が好きな雅子様に御所でお出ししておもてなしされた一品です
そしてフロア中央には美味しいお料理の数々






この他にも大変美味しいチーズ数種類
パエリアや小さなココットに最高に美味しいルイユを添えたブイヤベース
ローストビーフなどなど
またシェフ直々に揚げて下さる天ぷらやネタを選んで握って頂けるお寿司もありました
デザートには北海道ミルクのソフトクリームと季節の果物の小さなパフェなどを作ってくださる所もあり
すべてシェフ渾身のお料理の数々が並び正直一回では全てを堪能出来ないほどのご馳走尽くしです
いただいたお料理すべてを撮影するのももどかしく ほんの一部のご紹介となっていることをどうかお許し下さいませ

圧巻のお料理の数々
実はこちらの総支配人は元々JRのホテルで総料理長をされていた方らしく生粋の料飲部出身とのこと
食と飲み物には並々ならぬこだわりをお持ちのようでそのおもてなしの心に溺れるほどの充実した特別なランチとなりました
ちなみにランチビュッフェ平日で8000円でしたが内容と照らしあわせると充分すぎる満足感でした
実は従業員の方々の何人かから
「原価を考えると大丈夫かなと心配になります」
というお声がチラホラあり私も同感(笑)
ただ 今の大阪は高級ホテルラッシュ
インターコンチネンタル コンラッド フォーシーズンズホテルなどが乱立して消費者としては選び放題ですがホテル経営はなかなか大変かと思います
その中で美味しいものを駆け引きなく提供して下さる大阪ステーションホテル
是非一度
その幸せを体験してみてはいかがでしょうか
帰り際にお店の方に
「素晴らしい景色の職場ですね」
とお声をかけると「本当に」と答えて下さり
淀川の花火大会もこちらから見えるのでその時は特別メニューになりますが予約も承っておりますので是非一度お出で下さいませ
と教えていただきました
大切な人と是非訪れたいものです
帰りにフロントに立ち寄り許可を頂いてダイヤグラムの壁などお写真を撮らせて頂いていると「実は特別なバーもあるんですよ」とのこと
ホームページにもこっそりご紹介しているようなシークレットバーなんですが。。と
それは廊下にこっそりあるこの改札鋏の飾りを辿った先にあり。。


この扉のムコウにどんな世界が広がっているかは訪れた人だけが知る世界
バーは誰でも利用できるそうなので鉄道好きの方もそうでない方も是非一度勇気をもってこの扉を開いてみてはいかがでしょうか
こんなワクワクするホテル
他ではなかなか味わえない体験です!